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木の高い能力が耐久性に優れた家をつくる

2018年5月20日「日曜日」更新の日記

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 木造の家の耐久性を語るとき、しばしば引き合いに出されるのが、世界最古の木造建築である法隆寺です。1300年以上の長い年月を地震や災害に耐え、いまだその美しい姿を奈良・斑鳩の地に残しています。  ですが、法隆寺の例を持ち出して木造住宅の耐久性をうんぬんしても、読者のみなさんにはピンとこないだろうと思います。身のまわりに建っている見慣れた木造の家と世界的な文化遺産である法隆寺を、すんなりと結びつけて考えるのはむずかしいことでしょう。  1997年に財団法人アーバンハウジングが出した「住宅市場の長期展望」という報告書に、興味深いデータが載っていました。アメリカ、イギリスなど欧米の4ヵ国と日本の住宅の平均年齢です。  データを見ると、日本の住宅の平均年齢が1983年時で13歳、1993年時で15歳と、欧米諸国の住宅にくらべて著しく低いことがわかります。つまり、日本には建てられてからそれほど時間の経っていない新しい(若い)住宅が多く、欧米には築年数の古い住宅がたくさん残っているということになります。  これはあくまで住宅の平均年齢を調べたもので、平均寿命や耐用年数を示したものではありませんから、欧米の家が長持ちして日本の家が短命だという話には直結しません。ですが、日本の住宅が次々に新しい住宅に建て替えられていることは明らかです。同報告書では、その理由のひとつとして、「建て替えの対象となっている1960~70年代に建てられた住宅は、今の一戸建ての水準から見れば、狭くかつ質も悪い住宅が多かったと考えられる」ことを挙げています。  身近な木造住宅と法隆寺を結びつけるのがむずかしいのは、日本人の記憶のなかに、質の悪い木造住宅のイメージが強く印象づけられているからだと私は思います。事実、高度経済成長時代のとにかく数を建てようという風潮は、もともと木造建築が備えていた高い耐久性を損なう方向に住宅業界を向かわせてしまっていました。  ですが、地方の旧家などに行けば、江戸や明治の時代に建てられた木造の家が立派に家族を守っている姿を見ることができます。その一方で、戦後建てられたコンクリートのマンションなどは老朽化が著しく進行し、住む人にとって、建て替えや改修の話は他人ごとではなくなっています。つまり、法隆寺を1300年の長きにわたって生き延びさせた、木が本来持っている高い能力を引き出せれば、コンクリートや鉄筋の家よりも丈夫で長持ちする家がつくれるわけです。  ローンを払い終えないうちに、せっかく建てた家に住めなくなる、歳をとって経済的な余裕がなくなっているのに、大がかりな補修が必要になる、住む人をそういった苦しい状況に陥れないためにも、住宅には高い耐久性が求められます。そのためには、木の高い強度を損なわずに能力を引き出す工夫と努力が必要です。

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