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木造軸組工法の特性

2018年5月16日「水曜日」更新の日記

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 高性能・低価格の住宅をつくるために私が最終的に選択したのは、日本の伝統的工法である木造軸組工法でした。先ほどは価格の面から、日本で最も普及している工法であるために、コストダウンが図りやすいというメリッ卜を挙げましたが、もちろん、選んだ理由はそれだけではありません。くどいようですが、何十年という長い時間を安全に快適に過ごせるための性能が備わっていなければ、いくら価格が安くても住宅としては失格です。 私が木造軸組工法を選んだのは、その工法で建てられた住宅に十分な性能が得られることが確信できたからです。  木造軸組工法によって性能の高い住宅ができる理由は、簡単に言うと次の2つです。  ひとつは、資材として使われる「木」が、人の住まいをつくるものとして高い快適性と耐久性を発揮する優れた素材であるということ、そしてもうひとつは、木造軸組工法が自由度の高い設計を可能にすることです。  素材としての木の優れた能力はとても一口では語れません。  まず、木造軸組工法そのものの特徴を他の工法と比較して説明することにしましょう。  木造軸組の家は、木の骨格によって全体の強度を保つ構造になっています。  まず、鉄筋を封入したコンクリートの基礎の上に土台となる材木を敷き、その土台の上に柱を垂直に立て、柱に梁を架けます。さらに、柱と梁で構成された骨格を、火打や筋かいを入れて補強します。そうしてかたちづくられた骨格が、家の重みを支え、地震などの揺れに耐えるわけです。  一方、同じ木造でも、ツーバイフォーエ法(2×4・枠組壁工法)の家は違った構造になっています。ツーバイフォーは北米で最も一般的な木造住宅の建て方で、主として使われる木材の寸法が2インチ×4インチに規格化されていることからそう呼ばれていますが、こちらは木の骨格ではなく、壁で強度を保つ構造になっています。枠組みに組んだ木に合板を張って壁面(床面)をつくり、一種の箱のような構造で強度を出すわけです。一部の大手プレハブメーカーが採用している木質パネルエ法も、原理的には同じです。妙なたとえかもしれませんが、軸組構造とツーバイフォーなど壁構造との違いは、骨格で身体を支える人間や動物と、硬い殼で身体を支える昆虫の違いによく似ていると思います。  強度を保つために壁のバランスが優先される壁構造の住宅には、窓の大きさや位置が制限され、増改築する場合にも気軽に壁を抜けないといったデメリッ卜があります。家の構造上のバランスが崩れ、十分な強度が保てなくなる恐れがあるためです。  しかし、骨格で家を支える軸組工法では、比較的自由に窓の大きさや位置を決められますし、増改築にあたっても、筋かいが入っていないところなら容易に壁を抜いて間取りを変更することができます。また、狭い敷地や変形敷地に対応した設計ができるのも、軸組構造ならではのメリッ卜です。家を建てる場所の特性を考慮し、家族構成や趣味・嗜好の異なるお客さまの要望に対応するためには、同じ木造でも、壁構造であるツーバイフォーより、木造軸組工法のほうが適しているわけです。  特に増改築のしやすさは、これからの住宅には欠かせない要素になってくると私は思います。後ほど耐久性の部分でくわしく触れますが、現代の住宅に求められているのは、できるだけ長い間、安心して家族が住まうことのできる性能です。もはや「雨露をしのげればいい」という低いレベルで住宅が量産されていく時代ではありません。当然、ひとつの家族が長い時間を過ごす間には、子供の成長や独立、ニ世帯同居・三世帯同居といったライフスタイルの大きな変化が訪れます。その変化に柔軟に対応できるのが木造軸組工法の住宅です。  もちろん、増改築の面において、木以外の資材を使う工法よりも有利なことは、あらためて言うまでもないでしょう。木は軽くて軟らかい加工しやすい素材ですから、現場での溶接や切断に難点を抱える鉄骨の住宅や、付け足した部分とのつなぎめが開きやすいコンクリートの住宅よりも増改築しやすいのは当然です。

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