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木造軸組工法がいちばん安くできる理由

2018年5月13日「日曜日」更新の日記

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 高性能・低価格の家をつくりたいと考えて事業に乗り出した当初、私はいろいろな住宅工法に手を出しました。ツーバイフォーエ法の企画住宅を試し、鉄筋鉄骨ではどうかと考え、また、カナダ製住宅の輸入を行なって、思わぬことに、当時のマルルーニ首相から感謝状をいただいたこともありました。ですが、試行錯誤の末に、日本の伝統的な工法である木造軸組工法を合理化して進化させるのが最も良い方法だという結論に達して、現在のスタイルに納まっています。  木造住宅は、家を建てようと考えている人の約8割から求められています。きちんとした設計を行なえば十分な性能が保てることもわかっていましたから、価格さえ下げることができれば、大多数の消費者に満足してもらえる住宅になります。そして実際、プレハブやツーバイフォー、鉄筋コンクリートといった他工法の家にくらべ、最も安くつくることができるのは木造軸組工法の家だったのです。  その最大の理由は、木造軸組が日本で最も普及している工法だということにあります。 とても単純で当たり前のことなのですが、普及すればコストが下がって、モノの値段は安くなるという経済の基本原理です。  余談ですが、ひとつ例を挙げましょう。私は十年来のパソコンフリークで、どこで聞きつけたのかパソコン雑誌から取材を申し込まれたりすることがあるのですが、このところの液晶ディスプレイの値下がりのスピードには驚かされています。以前はブラウン管のモニターの何倍も何十倍もしたものが、最近はぐんと安くなって、ほんの数万円の価格差になってしまいました。これは、需要が増えて量産が進んだことで大幅に価格が下がった顕 著な例だと言えるでしょう。部品の削減のところで説明したのとよく似ていますが、少ししか使われないモノは高く、大量に使われるモノは安くなるのです。普及すれば、安くて質の良い資材が流通するようになります。  大手住宅メーカーにはスケールメリットがあると言いましたが、鉄骨系プレハブエ法の家を主商品にする最大手のプレハブ住宅メーカーの販売戸数は、1996年度で約7万戸です。日本全体の住宅着工戸数が約164万戸ですから、シェアに直すと約4.4%にすぎません。木造住宅全体の着工戸数が約75万戸、そこから木質系プレハブの約4万戸とツーバイフォーの約9万戸を引くと、木造軸組工法の住宅は約62万戸。その他の木造工法の分を多めに差し引いたとしても、約60万戸の住宅が木造軸組工法でつくられていることがわかります。普及しているという意味でいえば、一社一社の特殊工法であるプレハブでは、とうてい木造軸組工法にはかないません。  普及している工法であれば、資材の物流体制も整っていますから、余分な流通コストをかけずにすみますし、大工さんを1から教育しなおす必要もありません。コスト上のあらゆる面で、普及していることは有利に働くのです。  事実、住宅金融公庫の調査では、木造軸組工法の住宅の平均坪単価はプレハブやツーバイフォーよりも安いという結果が出ています。それにもかかわらず、木の家は高いというイメージを持っている人が多いのは、木=ヒノキやスギのムク材といった連想を知らず知らずのうちにしてしまっているからでしょう。  確かに、木ならではの芳香と高い耐久性を持ったヒノキやスギは素晴らしい素材ですが、値段のことを考えると、必ずしも一般的な住宅に適したものとは言えません。「普及している」という要素とは相容れない位置にある素材です。  現在広く使われている、小さな板や角材を接着技術で加工した集成材は、強度や耐久性といった面においてムク材よりも高い性能を持っています。見た目も、表面にヒノキやスギの薄板を貼るなどの加工によって、ほとんどムク材と区別がつかないほどになって います。「金に糸目はつけないよ」という恵まれた人なら別ですが、高級なヒノキのムク材で家を建てなければならない理由はないのです。「木造住宅」と言っても、技術開発が進んでいる現在と、自然材しかなかった昔とでは、状況が大きく異なっているわけです。

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