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工務店・ビルダーの問題点

2018年5月5日「土曜日」更新の日記

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 大工の修業からこの業界に入って約25年、私は工務店・ビルダー側の人間として住宅づくりにかかわってきました。その間の経験から、私は、地域特性とお客さまの要望とにきめ細かく対応した、本当の意味で「快適な」生活を送ることのできる住宅は、地域に根ざした工務店・ビルダーにしかつくれないという自信を持つに至っています。しかし同時に、多くの同業者が抱えている問題に直面させられてきたことも事実です。  工務店・ビルダーの問題点は、大きく考えて次の3つに集約されます。  ひとつは、旧態依然とした建築技術です。  木の柱と梁で建物を組み上げる木造軸組工法は、古来から受け継がれてきた日本の伝統的な工法です。その技術は、家づくりの実践のなかで養われる勘や経験に大きく頼りながら、世代から世代へと引き継がれてきました。  しかし、現在の住宅に求められている性能は、かつてのそれとは比べものにならないほど高まってきています。大地震でも倒壊しない高い耐震性、数世代にわたって住む人の財産となる高い耐久性、地球環境に配慮した省エネ性、高齢者や障害者が暮らしやすいバリアフリー・・・。すきま風が当たり前だったかつての住宅と現在の住宅とでは、越えなければならないハードルの高さがまったく違います。にもかかわらず、多くの工務店・ビルダーには、勘や経験に頼っている旧来の工法を科学的な根拠に基づいて改善・改良して、住宅に対して新たに要求されている性能を満たしていこうという意識が希薄です。「ほかの工務店もどうせ同じだから」という消極的な横並びの発想で歩調を合わせてしまっていることもあります。  たとえば、大手住宅メーカーや住宅FCの本部では、技術開発に専念するスタッフを抱えていますが、ほとんどの中小の工務店にはそんなスタ。フは存在しません。したがって、柱と梁の緊結や耐力壁の配置といった家の強度に関する重要な部分なども、旧態依然の勘と経験の延長線で考えてしまい、現状で求められている性能とは程遠い施工を行なってしまうわけです。  コストの面を考えても同様のことが言えます。大多数の工務店・ビルダーが、旧来のやり方で足並みを揃えたまま工法の合理化を図ろうとしなければ、いつまでたっても日本の木造住宅のコストダウンは進みません。「いい住宅をより安く提供したい」というビジネスとして当たり前の姿勢が欠如している工務店・ビルダーでは、工法の合理化という発想も生まれないのです。また同時に、技術とは多少異なる部分になりますが、消費者が好むようなデザインに対する配慮や研究の面でも、工務店・ビルダーは立ち後れていると言わざるを得ません。  2つ目に挙げられる問題は、提案や説明の「わかりにくさ」です。  電化製品や衣類などと違って、住宅は出来上がりの姿が見えにくい商品です。とりわけ、お客さまの要望に沿ったかたちでつくられる木造軸組の家は、実際に建ってみなければわからない部分が多くなります。しかし、消費者としては、生涯最大の買い物を安易に決めるわけにはいきません。住みやすくて快適な家が出来上がることが納得できてはじめて、契約に踏み切ることができるのです。  大手住宅メーカーは、パソコンを使ったコンピュータグラフィックなどを駆使して、出来上がりの家のイメージを伝えようという試みを進めています。お客さまが安心してマイホームづくりに乗り出せるよう、できるだけ「わかりやすい」提案をしようとしているわけです。  ところが、ほとんどの中小工務店には簡単なパンフレットすらありません。打ち合せに入っても、一般の人が見てもおよそ出来上がりのイメージが想像できないような平面図で説明をし、「まかせてくれ」「信頼してくれ」の一点張りで話を進めようとするところがあります。ビルダーぐらいの規模になればパンフレットぐらいは持っているものですが、それだけでは現実の仕上がりに近いイメージが提示できているとは言えないでしょう。  そして、3つ目に挙げられるのは、保証制度の不備です。  業者の倒産のところでも触れましたが、経営状態が苦しくなった中小の工務店・ビルダーの数は急増しています。中小どころか、大手ですら危うい時代です。お金を払ったのに業者が倒産して家が建たないという状況は、他人ごとではない、非常に現実味を帯びたものになってしまいました。一部の住宅FCが日本で初めて導入した、業者が倒産しても第3者が工事を引き継ぐ「完成保証制度」にしても、中小の工務店・ビルダーが単独で成立させることは現時点ではほぼ不可能といってよく、消費者は業者の倒産という不安を抱えながら家づくりにのぞまなければならないのです。  また、技術の改善・改良がなされていないという問題とも関係していますが、住宅の性能に関する保証も、多くの工務店・ビルダーはできていません。公的な指標である「財団法人性能保証住宅登録機構」に登録することもせず、「安心だから」の一言で片付けてしまいがちなのです。  もちろん、ここに挙げた3つの問題をクリアーしようと努力を続けている工務店・ビルダーは存在しています。しかし、一般の消費者がその善し悪しをどうやって見分ければいいのかとなると唸ってしまいます。  言ってみれば、工務店やビルダーは、まだ一度も入ったことのないお寿司屋さんのようなものです。外の構えだけでは価格も味も判断できず、いざ入ってみてもメニューはわかりにくくて値段も時価。食べてみてはじめてうまいかまずいかがわかり、お勘定を済ませてからようやく、味と値段のバランスが取れているのかどうかがわかります。  しかも、中小の工務店のなかには、モラルの欠如した不誠実な業者が交じっています。一生で最大の買い物をするときに、こんなギャンブルには踏み出せないと考える人がいるのは当然でしょう。そういった人たちは、価格が一見明瞭に表示され、画一的な商品ではあるものの外れも少ない大手メーカーや住宅FCの家に流れていくことになります。  問題を背負ったまま従来どおりのやり方を続ける工務店・ビルダーでは、これから先は存続できない、そんな時代が確実にやってきているのです。

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